筋膜配列の生理学

【筋膜マニュピレーション理論】筋膜配列の生理学と姿勢・感覚の関係

筋膜マニュピレーションでは、「筋膜」が単なる組織のつながりではなく、運動・姿勢・感覚・痛みに深く関わる重要な生理学的構造とされています。

今回は、筋膜配列の生理的な働きにフォーカスして解説します。


✅ 筋膜配列は“動き”と“感覚”の媒介役

筋膜配列には以下のような機能が備わっています:

  • わずかな伸張刺激を感じ取る感覚受容器の存在

  • 各配列が特定の運動方向に反応する構造

  • 身体姿勢を安定させる張力構造

  • 筋膜の異常(高密度化)を“姿勢の代償”でカバーする能力

つまり、筋膜配列は動きと感覚の橋渡し役であり、姿勢の調整装置でもあるのです。


🧠 筋膜配列の張力と感覚入力のしくみ

筋膜には、筋や腱・関節から伸びた神経受容器が多数埋め込まれています。
これらは、筋膜に“基底張力”があるときに初めて活性化されます。

この張力を提供しているのが、筋から筋膜上へと伸びる筋線維です。

▶️ 筋膜に張力を与える感覚受容器(代表例)

種別 名称 反応する刺激
筋受容器 筋紡錘 伸張
腱紡錘 伸張
パチニ小体 張力変化
自由神経終末 張力/機械刺激
関節受容器 ルフィニ小体 基底伸張
ゴルジ・マッツォーニ小体 最大伸張
パチニ小体 運動の開始/終了

👉 これら受容器の情報により、脳は身体の運動方向や位置を正確に把握できます。


🧍‍♀️ 姿勢と筋膜:二重の運動プログラムとは?

私たちが運動を行うとき、脳内では以下の2種類の運動プログラムが同時に作動しています。

  1. 目的運動:手を挙げる、歩く、ジャンプなど

  2. 姿勢調整:動作に伴う重心の安定化や反作用への対応

この**「運動+姿勢」**の制御を完結させるのが、筋膜配列です。

また、これには以下の2つの感覚入力(求心路)が対応しています:

感覚の種類 役割
静的固有感覚 姿勢や関節の静的な位置認知
動的固有感覚 動きや変化のスピードの認知

🧵 筋膜の構造と姿勢制御の違い

筋膜には以下の2種類のコラーゲン線維が存在し、それぞれ役割が異なります

線維の種類 機能
長軸方向のコラーゲン線維 姿勢制御に関与
螺旋状コラーゲン線維 **動きの調整(協調運動)**に関与

このように、筋膜は静止時の支持と動作時の協調、両方の機能を支えているのです。


🧍‍♂️ 姿勢の“代償”としての筋膜の働き

筋膜には、姿勢の崩れを代償するメカニズムも備わっています。

  • 骨格は身体を支えるが、アライメント(整列)を維持する力はない

  • 筋膜は全身の骨格・筋・関節に接続しており、全体の整合性を担保

🔁 姿勢代償のしくみ

  1. 筋膜の一部に高密度化(癒着・硬化)が生じる

  2. 神経受容器が異常な張力に反応し、痛みを発生

  3. 身体は姿勢パターンを変化(代償)させて、痛みを回避

👉 これは一時的な適応であり、筋膜の機能に根本的な回復を与えるわけではありません。


✍️ まとめ:筋膜は“動くための感覚地図”

  • 筋膜配列は、張力と受容器によって身体の位置と動きを感知するセンサー網

  • 動作時には、目的運動と姿勢制御の2系統の神経経路と連携

  • 姿勢の崩れや筋膜の異常には代償機構が作動し、痛みを回避する

  • 筋膜は構造的にも、動的にも、感覚的にも“全身をつなぐ”役割を持つ

 

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