筋膜配列の解剖学

筋膜配列の解剖学とは?

筋膜マニュピレーション理論編より

筋膜は単なる「体を包む膜」ではなく、運動の認知・協調・代償に関わるインテリジェントな構造体です。この記事では、筋膜の配列構造とその終端、代償パターンについて解説します。


🔧 筋膜配列の基本:認知と協調のための「張力のネットワーク」

筋膜が正しく機能するためには、静的な「基底張力」が保たれている必要があります。この張力は、姿勢や動きの変化に対する感知センサーのような役割を果たし、身体の動きにおいて常にバランスを保とうと働きます。

筋膜は、近位と遠位の筋膜単位との間で張力を調整する能力を持っています。


🧩 CC(協調中心)の高密度化による張力の伝播

もし筋膜単位のCCが高密度化(硬化)すると、そこを中心に筋膜のバランスが崩れます。このインバランスは次の順で身体に広がります:

  1. 同じ筋膜配列の中で伝播

  2. 同一平面上の他の筋膜配列へ伝播

  3. 拮抗する筋膜単位が補正(例:前方運動が後方配列に影響)

つまり、筋膜の緊張はランダムには広がらず、「決まったパターン」で連鎖反応を起こすということです。


🔄 筋膜配列の代償戦略:2つのパターン

筋膜の代償反応は、以下2つの原則に従って行われます:

  • 上行性 or 下行性の代償
    (例:下肢の緊張が上肢や頭部に影響)

  • 同側 or 反対側の代償
    (例:右肩の硬さが左股関節に影響)


🖐 上肢における筋膜配列の終端

手指の構造は非常に独立性が高く、それぞれの筋膜配列が特定の指に終端します。

運動方向 終端する指
前方運動配列 母指(親指)
外方運動配列 示指(人差し指)
内旋運動配列 中指
外旋運動配列 環指(薬指)
内方・後方運動配列 小指

🦶 下肢における筋膜配列の終端

足の指の動きは、手指よりも連動性が強く、下記のように終端が分かれています。

運動方向 終端する足趾
前方・内旋運動配列 第1趾(足の親指)
外方・内方運動配列 第2~4趾
後方・外旋運動配列 第5趾(小趾)

🧠 頭部における筋膜配列の終端

筋膜配列は最終的に頭部で終端します。これは、**目と内耳(耳石)**が空間認識の中心であるためです。張力の終端位置は以下の通りです:

運動方向 終端する部位
後方運動 眼の上方
前方運動 眼の下方
外方運動 外眼角(目尻)
内方運動 内眼角(目頭)
外旋運動 眉上部
内旋運動 眉毛の末端

なお、固有眼筋の単独障害で筋膜配列の特定は困難であり、頭部と眼球運動の協調不全として現れるのが一般的です。


✅ まとめ

  • 筋膜は張力のネットワークとして、運動と姿勢の協調を司っている

  • 高密度化(硬結)は、配列に沿って秩序ある代償パターンで伝播する

  • 筋膜配列は、手足や頭部の特定ポイントで終端し、そこで最終的な張力のバランスが取られている

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